「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治 新潮社)
有名な作品ですよね。
でも、実はちゃんと読んだ人って少ないような気がします。
個人的には、最近初めて読みました。
30ページに満たない短編です。
一番印象的だったのは
おもしろ猫描写。
・・・そこ?
はい。
金星音楽団というイカすネーミングの楽団(実態は無声映画の伴奏が主な仕事?)に所属する
ゴーシュという名前のセロ弾きのお話。
セロってチェロの事ですね。
ゴーシュ君は、楽器演奏のスキルがあまり高くなく、楽長にダメだし喰らって凹みますが
動物たちとの交流によって
あたかも「2001年宇宙の旅」で木星に到達したボーマン船長がスターチャイルドとして新生したように
次なる高みへと駆け上る。
そういう話です(?)
一見ハッピーエンディングですが、実は違う。
巻末の解説には、そんな説も紹介されていましたが
確かに、読んだ人それぞれ解釈は異なると思います。
これ、実質的に宮沢賢治さんの「最後の作品」なんですよね。
それを踏まえると、ラストのゴーシュ君の描写も深読みして別の意味を汲み取る事もできるでしょうし・・・
舞台は明確に示されませんが、主人公の名前がゴーシュ。
つまり場所は日本じゃないですよね・・・
時代については無声映画から考えると20世紀初頭でしょうか?
しかもゴーシュ君は普通に動物と会話する
童話だから問題なし。
そういう事ですが、
童話だから何でもあり
これ、改めて考えると、便利な設定ですよね。
勿論、その設定を使いこなせるか否か
そこについて作者の力量が問われるのですが・・・
ゴーシュ君と関わりを持ち影響を与える動物たちは以下の通り
大きな三毛猫
かっこう
狸の子
野ねずみの家族
この中で猫の描写が秀逸。(狸の子も可愛いですけど)
楽長に叱られて家「町はずれの川ばたにあるこわれた水車小屋」(266ページ)に帰って来て、一人で楽器の練習やってるゴーシュ君の所に
「すうと扉を押してはいって来たのはいままで五六ぺん見たことのある大きな三毛猫でした」(266ページ)
そして猫は開口一番
『ゴーシュの畑からとった半分熟したトマトをさも重そうに持って来てゴーシュの前におろして言いました。
「ああくたびれた。なかなか運搬はひどいやな」』(267ページ)
・・・突っ込み所多すぎの発言ですが、その後の展開も予想だにしないモノ
『「何だと」ゴーシュがききました
「これおみやです。たべてください」三毛猫が云いました』(267ページ)
・・・ゴーシュ君の畑からとってきた、しかもまだ半熟のトマトを、おみやげです。と言う神経。
猫っぽいですよね。
それは、さておき
この猫がどうやってトマトを運搬したのか気になります(そこ?)
どうやって頭の上にトマトを載せるのか? |
ま、童話ですから・・・
その後も、この猫は
「先生、そうお怒りになっちゃ、おからだにさわります。それよりシューマンのトロイメライをひいてごらんなさい。きいてあげますから」(267ページ)
上から目線にも程があります(笑)
で、その結果
「先生、こんやの演奏はどうかしてますね」(269ページ)
・・・この他にも猫は色々問題発言を連発し当然ゴーシュ君を怒らせて
「風のように萱のなかを走って行く」(270ページ)
要するに這々の体で逃げてゆく羽目になるのですが・・・
結局、ゴーシュ君に最も影響を与えた殊勲者は
この偉そうな猫だと思うのですが・・・
それはともかく・・・
この猫の描写、宮沢賢治さんが意図したのかどうか分りませんけど
猫の面白さが見事に表現されていて笑わせてもらいました。
現実世界の話ですが
猫って楽器好きですよね?
別にクラシック愛好家とかイングウェイ・マルムスティーンのギターが好きとか、そういう意味ではなく(そういう猫もいるのかも知れませんが)
楽器自体に興味津々。
特にピアノが気になるみたいですね。
そんな動画多い様な印象あります。
鍵盤の上歩くと音が鳴るのが面白い。
まず、これが猫的には心引かれるんでしょうね。
あと、ピアノのハンマーって言うんですか?
鍵盤踏むと、あれが動くのも面白いんでしょうね。
夢中になって大騒ぎ。
で、それ見て私も大喜び。
めでたしめでたし。
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