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2019年4月6日土曜日

矢口史靖監督映画「サバイバルファミリー」感想。ネタバレあり。文明の象徴としてのカツラ。


「サバイバルファミリー」



2016年公開。矢口史靖監督作品。



東京(結局、全世界規模だった事が最後に分る)が謎の停電に襲われ、電気が失われた世界の混乱と行く末を、ある家族を通して描きます。

その家族構成の配役は

小日向文世さん(父親。サラリーマン)
深津絵里さん (母親。専業主婦)
泉澤祐希さん (息子。大学生)
葵わかなさん (娘。高校生)



世界の設定は以下の通り




水道も使えない。

これは水を各家庭に送るポンプが電力だから、という理屈みたいですね。(井戸は使えます)

電池を動力とする機械も使えない。

これは意味が分らない。

プラグの問題(?)で車も使えない。

病院なんかの自家発電装置も同じく?

釈然としませんが・・・

「そんな世界なんだよ。文句いうな」

そういう事ですね。分りました。



自衛隊や警察という公の組織については、ほとんど描かれない。(どちらもチラッと登場するだけ)



描かれるのは基本的に個人、家族。最大単位は地域共同体レベル。

まるで電気だけでは無く

日本政府も消滅したような世界が訪れます。



で、2年後


主人公家族は妻の実家がある、鹿児島県で

自給自足の生活を満喫(しているように見える)


文明が電気発明以前に戻ったら・・・

理想郷到来。

宮崎駿作品世界的な美しき原始共産社会の実現。

そんな風に描かれてますが・・・


ま、そんな日々が長く続く訳がないと作り手も分っているのか

突然

電気が復旧

世界は元に戻ります。

で、その結果は・・・




極限状態の中に放り込まれた事で直面させられた

家族の絆

この再確認再構築を描く

そういう映画です。


あと、電気をはじめ文明のありがたみ

これも改めて感じさせられますが・・・




実際、世界規模で電力消失したら



国内レベルだけでは無く国家間レベルで、様々な大問題が発生しますが、その辺はスルーされます。


政治、経済、軍事的事象についてリアリティを求める人は、この映画を見ない方が良いでしょう。

マクロな視点を求める人も。




オールロケで撮影されたそうで


撮影は過酷で俳優さんたちが大変だったのは間違いないでしょう。

小日向さんは言うまでも無く

女優さんも、文字通り汚れ役を熱演。

でも、まだウェザリングが足りない。

顔はドーラン塗ってても歯は真っ白だし。




川を渡るシーンは

設定は夏、撮影は11月だったそうで・・・

しもやけ体質の私なんか絶対無理です。



この映画に於ける川のシーンといえば


色々な意味で最も観客のエモーションが昂ぶるポイントだと思います。


疑問という形で。


小日向さんが激流に流され、命を落としたと思い込んだ家族が悲しみにくれる

ここ、ひねった描かれ方をしているのですが・・・

その、ひねり方はどうよ?

そう思った方は多いはず。(私は、そうです)

小日向さんは前頭部に部分カツラを装着していると言う設定ですが(何度も脱着する様子が描かれます)

小日向さんが川に流されて姿を消した後

息子が川から回収したのは

部分カツラのみ

それを見つめ涙ぐむ家族

・・・劇中、散々「クスリとした笑いを生むツール」として「利用」してたブツを(違いますか?)

そんな風に扱われても

こっちは困惑(私はそうでした)

結果、笑うべきなのか悲しむべきなのか?

「笑えば良いと思うよ」(byシンジ君)

観客の頭の中には巨大な疑問符が浮かんだ

そう思いますけど・・・


私だけでしょうか?


お笑い発生ツールだったカツラが悲しみの遺品に転化する。


凡庸を嫌った演出なのでしょうが

取って付けた様な感じがしますし(カツラだけに)

スベッタような気もします




このシーンの解釈はさておき


矢口監督ってカツラを単に作劇上の「ツール」として扱ってる印象が有ります。

「ハッピーフライト」もそうでしたが・・・

「カツラ、安易にネタにしてんじゃねえよ!」(落ち着け)

「・・・かぶってる人間の気持ちも考えろ」(涙拭け)

こんなカミ無き者達の声が聞こえます。



小日向さんは結局、下流まで流されただけで生きていた事が判明しますが(落としたのは命ではなくカツラだけ)


遺品よろしく部分カツラを持っていた家族にそれを渡され・・・

蒸気機関車の車窓から

投げ捨てます。


過去の世界との決別。


「ダーティーハリー」一作目のラスト、ハリーキャラハン刑事が

警察バッジを川に投げ捨てるシーンを彷彿とさせます。




小日向さんが川に流され一時行方不明のまま、深津さんと息子、娘三人で山中をさまよっている時

野犬に襲われるシーンがあります。

あわや、という瞬間、騎兵隊ならぬ蒸気機関車が来て難を逃れるのですが・・・

野犬なんて現代日本には事実上殆ど存在しないわけで、あの犬たちも

ペットの成れの果てですよね・・・

確かに文明が崩壊したら

ペットはどうなる?

これ、気になりますよね・・・



人類滅亡した後、地球はどうなるか?


こんな海外のドキュメンタリー番組を見た事があります。

その中では、ペットの犬は人間から餌を与えられなくなると死ぬしか無いが

猫は自分で狩りをして生き延びる

・・・こんな風に描かれてました。

流石、猫!

やればできる子や。(人類滅亡しても、猫が生き残る事を喜ぶ奴)


ま、全ての猫が対応できる訳じゃないんでしょうけど・・・

色々想像して心配になる猫着ぐるみ姉妹の姉。
今日も元気で食欲旺盛なデカ猫氏。

























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