仁木悦子さんの「猫は知っていた」
まず、タイトルが良いですね。
確かに猫って色々知ってそうじゃないですか?
それはともかく・・・
猫、大活躍します。
ある意味・・・
それはともかく・・・
猫、大活躍します。
ある意味・・・
この作品、最近、表紙をリニューアルしてポプラ文庫ピュアフルから「仁木兄妹の事件簿シリーズ」として再版されてますが、私の手元にあるのは
昭和58年5月13日第29版発行の講談社文庫版です。
ポプラ文庫版の表紙は中村佑介さん
「謎解きはディナーのあとで」なんかも担当されてる方ですね。
「謎解きはディナーのあとで」なんかも担当されてる方ですね。
「ジャケ買い」する人あてこんでの起用って事でしょうか・・・
そのせいか、いや作者の特質なのか、全体に柔らかい、のんびりした雰囲気が漂ってます。
癒やし系ミステリー?
ネットがらみの犯罪が描かれる冷たい現代ミステリーに慣れた頭には新鮮かも。
兄妹素人探偵ものなのでそういう関係に憧れる人にもお勧め?
この本の発表は昭和三十年代前半。勿論、パソコンもスマホも携帯もありません。
そのせいか、いや作者の特質なのか、全体に柔らかい、のんびりした雰囲気が漂ってます。
癒やし系ミステリー?
ネットがらみの犯罪が描かれる冷たい現代ミステリーに慣れた頭には新鮮かも。
兄妹素人探偵ものなのでそういう関係に憧れる人にもお勧め?
解説によると、この作品は仁木悦子さんのミステリー小説デビュー作にして実質的第一回
江戸川乱歩賞受賞作。(第一回受賞は評論家の中島河太郎さん、二回目はハヤカワの推理小説シリーズ「ポケットミステリ」現在の「ハヤカワミステリ」)
内容は巻き込まれ型素人探偵モノです。
植物学を専攻している学生、仁木雄太郎と「音楽大学の師範科」に在籍している妹、悦子の兄妹が間借りした病院で起きる事件に巻き込まれる物語。
悦子を語り手とした一人称小説です。
作中での時代も昭和三十年代前半。
なんと「防空壕」がでてきます。作品中重要な役割を果たします。
余談ですが、私は子供の頃「ぼうくう号」という乗り物の事だと思ってました・・・
なんと「防空壕」がでてきます。作品中重要な役割を果たします。
余談ですが、私は子供の頃「ぼうくう号」という乗り物の事だと思ってました・・・
キャラクターの名前からすると作者=登場人物というパターン?
いや、勿論、単純にイコールではありません。
そもそも仁木悦子はペンネームですし、名前以外にも大きな相違点が・・・
そもそも仁木悦子はペンネームですし、名前以外にも大きな相違点が・・・
作中での「悦子」の描写
『私は四尺八寸の六頭身だが、小学校から高校まで、短距離の選手を勤めてきた人間である』(116ページ、漢字は原文のまま)
実際の仁木悦子さんは(以下、解説より引用)
『「昭和3年3月、東京に生まれた」
「四歳のとき、カリエスに罹って足が動かなくなり、寝たきりの生活を続けなければならなくなった」
「当時の教育事情では就学の見込みは全く立たなかった」
「その代わり、当時旧制高校に在学中であった兄が、妹の家庭教育に当たった。小学校や女学校の教科書を買い求めてきて与え、毎日二時間ずつ厳しく指導したという」
「女学校三年程度まで進んだとき、当時東京帝国大学の心理学科に在学中であった兄が学徒出陣で出征せざるをえなくなり、兄による系統的な家庭教育は一応中止された」』
学徒出陣は昭和十八年ですから、悦子さん十五歳の時ですね。
お兄さんがどうなったのか、解説にはありませんがwikiによれば戦死されたそうです・・・
『それ以後の悦子は、もっぱら読書とラジオだけによる、文字どおりの独学である』(解説より)
こういう経歴の方が江戸川乱歩受賞したと言う事で、話題になりマスコミが取材に殺到したそうです。
『新聞や雑誌の記者と四十数回ものインタビューをした』(解説より)
そりゃそうですよねぇ・・・
読み書きできるようになっただけでも凄いと思いますが、賞を獲る小説まで書いたのですから。
本人の学習意欲とお兄さんの熱意のたまものでしょう。
別に、この本にはお兄さんに向けての献辞はありませんが、間違いなくお兄さんに捧げられた物語でもあると思います。
しかし、作中にウェットな空気は微塵もありません。
後日談として
仁木悦子さんは本作のヒットによって
『国立第一病院で五回にわたる手術を受けられることになり、その手術も成功して、今では車椅子をあやつって、家の中はもちろん、外へも出歩けるようになっている。また、入院中に知り合った現在の夫君と結婚して、幸福な家庭生活を営み、夫君の翻訳業を手助けするかたわら、マイペースで創作にいそしんでおられる』(解説より)
で、この「夫君」とは翻訳家の後藤安彦さん
この方は脳性麻痺で就学できず
独学で外国語を学んで翻訳家になったそうです。(wikiより)
後藤さんの翻訳されたレン・デイトンの「グッバイ・ミッキーマウス」
これ、私のフェイバリット小説の一つなのですが、今回仁木さんについて調べるまで、こういう事は知りませんでした。
受賞時の作品に関しての評価ですが
『大きなトリックには必ずしも創意はないけれども、こまかいトリックや小道具の扱い方に、女性らしい繊細な注意が行きとどいていて、その点ではアガサ・クリスティを思わせるほどのものがある』(解説に引用された「選考報告」より)
「アガサ・クリスティを思わせる」
私もそう思いました。ただし、選考報告とは違う意味で。
- 重大事件進行中なのに陰惨な空気がない。むしろ、どこかほのぼのしている。
- 「そりゃ無理でしょ」と突っ込まざるを得ないトリック
以上2点が私が感じたアガサ・クリスティとの共通点です。
ほのぼのムードについて
クリスティの「ミス・マープル」シリーズなんかそうですよね。それ以外でも、ポアロさんが出てくると空気和みますし・・・
トリックについて
例えばクリスティの「そして誰もいなくなった」は傑作だとは思いますが、最後のトリックは、うまく機能しないかも?と私は思います。
「猫は知っていた」のトリックは、それ以上に成功確率の低いギミックです(断言)
「このトリックは無理でしょ」と思う猫着ぐるみ姉妹の姉。自由気ままなデカ猫氏。 |
0 件のコメント:
コメントを投稿